-以下、備忘録

ご笑覧下さい。笑えねーけど。

-11月3日~11月5日

11月3日(金 国民の祝日、そう"文化の日"。日々、文化とは縁遠い日々を過ごしております。触れたいという気持ちはあるので御座いますが、どうしても身体が言う事を聞いてはくれないので御座います。通常時なら金曜祝日とくれば、"現場"に早朝から入らなくてはならないのだが、現状の自分には到底無理。そういえば"鉄人"からはその後、一切連絡がない。代表は定期的に妻とLINEで遣り取りをしているらしいが(無論、主目的は私の安否確認)。唯でさえ人手不足なのに、欠員が出てしまったせいで益々お忙しいのだろう。そう考えると、申し訳なさは募る一方。相変わらず睡眠不足ではあるが、本日は思いの外動けそうな予感。東京の最高気温は25℃まで上がるらしい。快晴の空、絶好の行楽日和。昨日、妻の言っていたお出掛けだが、どうやら目的地が定まったらしい。都内の某庭園。都心が激混みなのは確定なので、少し外れた、我が家から電車を利用すればそう遠くない所。歩いても、大人の足で1時間は掛からない(Google Map大先生によれば)。まあ、昔から何度か行った事がある。学生時代には仲間達とほろ酔いで、ライトアップされたしだれ桜を観に行ったし、妻の妊娠が判って迎えた春、運動がてら一緒に散歩した。鬱蒼と木々の茂る(しかし確かに人の手が加わった)、木漏れ日が無数のスポットライトの様に照らし出す小径を、妻の身体を気遣いながらゆっくりと歩いた。気持ちいいねえ、こういう緑がいっぱいの所で暮らしたいわ、そう妻が言っていた。

 家族全員でお出掛けするのは、恐らく7月の三連休、軽井沢以来か(親族の集いがあった)。どうやら妻達は都バスと電車を乗り継いで向かう模様。私は迷うこと無く、徒歩を選択。今なら、確実に乗り物酔いする自信がある。多分、そちらの方が早く到着するから、先に入ってて構わないからね。着いたらLINEします。そう言い残し、一足先に家を出る。勿論、場所はGoogle Mapに頼らずとも判っている。自転車があった頃には、大学時代から何度もあの辺は行った事がある。"庭"と言っては過言だが(庭園だけに)、土地勘はある。だが、どう考えても人通りの多い大通りを行くのは得策ではない。かくして、裏通りをひたすら歩く事に決定。これほど長く歩くのは本当に久しぶりだ。心療内科に行って以来だろうか。都内の庭園の多くは大名屋敷の跡地だと聞いた事がある。きっと隣にタモさんがいたら、さぞや蘊蓄たっぷりの愉しい散歩になるだろうが、残念ながらぶらり一人旅。"閑静な住宅地"という言葉がピッタリの、瀟洒な家が建ち並ぶ、綺麗に舗装された歩道を、目的地へと向かってただ黙々と歩く。談笑する親子連れや、大型犬をお散歩させるカップル、ジョギング(って死語でしたっけ?)に精を出す人……誰も彼もが幸せそうだ。或いは何かに夢中になり、一心不乱に取り組んでいそうだ。俺は一体何なのだ。五感を通じて得られる無数の情報、少し汗ばむくらいの心地よい気温、穏やかな空気、微風、グラデーションに富む色づき始めた木々の葉、遠くで微かに聞こえるバイク音、お婆ちゃん達の井戸端会議……、以前の私であれば、こうした無数の情報を統合して、馬鹿の一つ覚えのように、こう呟いていた筈だ。そう、世界は美しい。だが、今の私の脳味噌では、前の様な結論を導き出せない。いや、素直に導き出す気になれない。プログラムとしての思考、何処かがバグっている。睡眠不足が最大の要因なのは間違いない。だが、果たしてそれだけだろうか。案じている事の九割は起こらない。だから、今自分が抱えている、とある懸念(疑惑、と称してもよい)が杞憂である事を願っている。無論、最低最悪のシナリオも想定して。そうこうしている内に、目的地まで後僅か。信号を待っている間に妻からLINEが届く。着いたから先に入って待ってるね。分かった、着いたらLINEする。信号が青に変わる。正門に到着すると何たる事、工事中につき閉鎖中なので裏門(いや、どっちが表か裏か考えた事なかったな)にお回り下さいとの事、後100mは余計に歩かなくてはならんとは、ガッデム! という訳で裏門へと回り、窓口にて入園券を購入し、着いたよ、とLINEしようとしつつ辺りを見渡すと、割と直ぐに家人の姿が見つかる。皆、大きく手を振ってくれた。何とか駆け寄り、気の向くままに歩き出す。別に私が観たい所はない。という事で主導権を次女に委ね、彼女に着いて行く。流石に、都心から多少離れているので大混雑とまでは言わないが、それでもなかなかの人出、外国人観光客多数。それも見た目や言葉から判断するにかなり多くの国々から。割とカジュアルに皆さんタトゥー入れてらっしゃるのね。うーん、ダイヴァーシティー! 欄干のない狭い石橋を渡る際は、誰も彼も譲り合いの精神発揮。人類、皆兄弟。庭園を一望できる小高く盛り上がった箇所(って、どう呼称したらいいの? "丘"??)に上ったり、嘗て妻と二人歩いた木漏れ日の降り注ぐ小径を、今は家族四人で歩いたり(ちなみに妻は、その時の事を全く覚えていなかった)、錦鯉を見てはしゃぐ次女を眺めたり、対照的に無言でスタスタ先を歩こうとする長女を呼び止めたり……、お昼の時間が近づき、庭園内にあるお茶屋さんに入る。ここでお昼食べて行こうと思うんだけど、パパどうする? いや、まだお腹空いてないからいいや、遠慮無くどうぞ。私を除く皆が思い思いの品を頼んで食べるのを、暫し眺める。一緒に愉しく食べたかったが、相変わらずお腹は張っている。朝食からまだそう時間が経っている訳でも無い。これを果たして"団欒"と呼び得るのかは定かでないが、久々に家族四人で過ごせている、この穏やかな時間を祝福しよう。そう考えながら、家人の背後に広がる庭園に目を遣る。隅々まで人の手が加わり、整えられた、目映い陽光に照らし出されたこの光景は、きっと美しいものなのだ。そう自分に言い聞かせながら。

 帰り際に、長女が書店に寄りたいと言い出す。どうも現在進行形で読み進めている児童文学シリーズの最新刊が出ているかどうか気になって仕方ないようだ。と言うわけで神様、仏様、Google様。検索すれば、どうやら徒歩数分の複合施設内に比較的大きめの書店がある模様。いざ、向かうも、既にこの時点で私は疲労困憊(主に精神面で)。こんな長距離歩いたのは久しぶりだし(つい一ヶ月前の元気ピンピンだった自分が嘘のようだ)、寝不足で頭がぼうーっとするし、等と考えつつ、お目当ての本を探し回る娘二人を眺めていたが、業を煮やして遂に最終兵器発動。店員さんに訊いた方が早いんじゃない? 後、タイトル何て言うの?? で、長女が店員さんに訊いている間に、Amazon様で検索。検索、検索、何でも検索。きっと、そう遠くない未来、検索エンジンは神にとって代わる。大半の人間は、生きる意味を求め"検索様"を頼り、或いは縋らない事には生きていけなくなる、いや、もうとっくにそうか。はい、答えが出ましたー、残念でしたーー!、発売日は8日の水曜日でーす!! それを楽しみに頑張って生き抜いていきましょーねー!!! ……とまでは言わないが、長女に事実を簡潔にそっと耳打ちする。これにて、一件落着、かと思いきや、どうやら別の本を買うようだ。まあ、読書習慣は大切な事だが、何事も用法・用量が肝腎だ。パパが服用してる薬と一緒でな……、の割に全然寝れねぇーんすけど。で、やっと買い物が終わり、では帰るのかと思いきや、今度は同施設内に入っていた雑貨屋さんに次女が興味を示し、入店。気づけば、長女の姿がないので、何処行った?と店外に出て探せば、日向のベンチに独り腰掛け、購入仕立ての本を読んでいるご様子。この辺のマイペースさも親譲りか。将来苦労しなければいいけどな、何て事を考えている余裕など無かった。段々と気分が悪くなって来る。脳内で壮大に反響する"KAERITAI"の大合唱。遂に我慢が出来なくなって妻に告げる。ごめん、気分が悪くなってきたから先帰ってもいい? うん、いいけど、大丈夫? どうやって帰るの?? 歩いて帰るわ。あんまり乗り物乗りたくないし。昼ご飯も準備しなくていいよ。外で何か食べて来るから。わかった、気をつけて帰ってね。三人に手を振り、ふらふらと歩き出す。今回の外出に際し、家族と一緒に出掛ける事、運動する事とは別に、もう一つの目的が自分にはあった。そう、外食する事。勿論、たまにコンビニで賄う事もあった(栄養管理士さん的にはアウトでしょう)が、例の一件以来、基本、妻が準備してくれた食事ばかりを食べていた。蕎麦、そう、無性に蕎麦が食いたかった。それも高級なヤツじゃなくて、この上なく愛している某チェーン店の蕎麦を。家賃の関係から、敢えて駅から距離のある立地に店舗を構えるという戦略をとる、そんな某チェーン店の蕎麦を。閑話休題。嘗て肉体労働をしていた頃の事だが(女性が圧倒的に多い職場だったが、毎月の様に誰かが消え、代わりの人間が補充されていく、今となっては相当にブラックな現場だった。人が辞めなかった月は、雹でも降るのでは、と思ったくらいだ)、どんな共同体にもある謎の風習として、新人は顔写真付きの簡単なプロフィールを記入した用紙を提出するというものがあった。まあ、内容は他愛のないものばかりだったが、"好きな食べ物"の欄に迷わず"蕎麦(+麻婆豆腐)"と記入した位には、私は蕎麦が好きだ。特に立ち食い蕎麦が。腹に余り貯まる感覚がなく、そんなにお腹が減っていなくてもツルツルイケるのも良い。話を戻す。Google Mapなる神なんぞに頼らなくとも、帰路は重々承知。その中途に某チェーン店がある事も、だ。蕎麦をたずねて三千里。瀟洒な住宅街、石段を駆け下り、細い路地をすり抜け、坂道を駆け上がり、遂に到着。ガラガラの店内、そりゃそうか。わざわざ休みの日にここらに来る用事なぞ、急病を患う以外、特には思いつくまい。季節外れの初夏のような陽気に、火照った身体。迷うこと無く、季節のかき揚げ蕎麦、冷やし(大)で。大丈夫、今ならきっと大でも食べられる。その為にこうして運動して来たのだから。程なく、季節大冷やしのお客様ー(正確には整理番号だった気もするが覚えていない)、と声が掛かり、恐る恐る箸に手を伸ばす。勿論、その前に、鷹の爪とお店の特選スパイスをガンガン投入する事も忘れずに。一口啜る。揚げたての季節のかき揚げを一口囓る。美味かった。変わる事なく美味かった。後は無我夢中で啜り、囓り、汁に浸し、蕎麦湯を投入し、残った汁を暫し啜った。一息つく。余は満足じゃ。うん、食欲は十二分にある事はこれではっきり証明された。体力についても、これから徐々に運動量を前の状態にまで近づけていって回復していこう。問題はそう、メンタルだ。いや、そもそもが睡眠だ。何とかして眠れるようにならなくては。流石に今日は沢山運動したから、朝までぐっすり眠れる事を期待しよう、そうしよう。少しでも欲を取り戻していこう。そうやって、日常を取り戻していこう。そう考えながら帰宅。そして、疲れたのだろう。恐らく気絶するように昼寝をした。

 

11月4日()~11月5日(はーい、そんな訳でね。結局は元の木阿弥になってしまいましたとさ。ああ、無情。長時間の散歩は逆効果だったか。フィットネスの履歴を見る限り、変わらず深夜~早朝にかけての徘徊が著しい(といっても、一回あたりの消費カロリー、6kcal程度だけど)。それ以外に、ほぼ活動履歴なし。さしたる記憶が無い事から、想像するまでも無く、これまで通りのグッタリとした休日だったのだろう。朧気な記憶ではあるが、土曜日は、妻は子ども達を連れ、街へ買い物に行っていた気がする。日曜日は長女の学校行事で、妻もPTAの一員として駆り出されたので、15時頃まで次女とお留守番。これ幸いとばかり次女は、ほぼ半日YouTube三昧。これもまた、現代の神か。彼女にお昼ご飯を何か用意してあげた筈(作り置きのものだが)。妻と長女は帰宅途中、ゲリラ豪雨(と、この季節でも言うのか?)に遭遇したらしく"雨上がるの待ちです"、"合点承知!"なる遣り取りの履歴がLINEには残っている。他に特筆すべき事なし。