-以下、備忘録

ご笑覧下さい。笑えねーけど。

-11月2日

11月2日(木) 坊主にしようと思い立った。もやもやした気分をスッキリさせたいという意識が働いたのは確かだろう。人生で最初に坊主にしようと思ったきっかけは何だったのか、今ではもう思い出せない。そもそも、幼い時分は、坊主にするのは絶対に厭だった。私が生まれ育った地は(現在はどうなのか知らないが)、"公立中に進学=男子は強制的に坊主"、という野蛮且つ無意味なルールが罷り通る、高野連も真っ青の保守的なお国柄だったので、それが厭で中学受験をした位だ(正確には、そうやってガキンチョは、親にまんまと誘導された訳だが)。初めて坊主にした時、真っ先に思ったのは、俺、頭の形めっちゃ綺麗じゃん(自画自賛)、という事だった。それ以来、毎年一回は必ず坊主にするようになった。頭が軽くなるし、心なしか天パ(頭がパッパラパーという意味ではない)も多少矯正されてきたような気がする(加齢に伴う体質の変化が実態だろうが)。側面1㎜、上部は気分によって、4~6㎜。それがマイ・ルール。大体は真夏にする事が多かった。単純に暑くて、髪の毛が鬱陶しかったから。後、洗髪が超楽(町中華の名前みたいだな)。乾かす手間も皆無。良い事尽くしではないか。余談だが、挙式後僅か3ヶ月後に、長女懐妊が発覚し(当時、諸事情あって、私は無職だった)、"こんな状態で、俺は人の親になんのか!?"という動揺のあまり衝動的に坊主にした事は、今でも覚えている。一月の、とある寒い日の事だった。そんな思い出とは無関係に、一昨年頃から、秋冬に坊主にするようになった。その方がニット帽が被りやすいから(どうしても髪が伸びた状態でニット帽を被ると髪型がぺったんこになるのと、前髪の処理がウザい。出すべきか、出さぬべきか。それが問題だ)。という訳で、行きつけの1,000円カット(を名乗りつつ、物価高騰により現在は1,200円)へと向かう。ここを見つけたのはたまたまだった。一昨年の夏だったか。次女が、とある手術の関係で、10日程入院する事になり、前半の5日を私、後半の5日を妻、というシフト制で病院に泊まり込んだ(残念ながらコロナ禍につき、付き添いは一名のみ、日中の交替は認められなかった)。迎えた私の付き添い担当最終日、それは娘の手術日だった。ワンワン泣く彼女に付き添って、看護師さんに引き渡し、手術室のドアが閉まるまで彼女の姿を見送る。そうして手術中(2時間程度かかると伝えられた)に思い切って病院を脱けた。無論、看護師さんに許可を得た上で。ほぼ5日間ずっと、娘の世話以外に自分の事は碌に何も出来なかった。息が詰まりそうだった。夏の日差しに目を細め、咽せるような熱気を身に纏いながら、病院から一番近い(事前にググっていたので、ここにしようと目星をつけていた)、駅前の1,000円カットへと急ぐ。迷う事なく開店即入店。当然、客は私以外に誰もおらず、慌ただしくも優雅な心持ちで、存分に頭を丸めて貰った。戻っても看護師さんからは一切ツッコミはなかったが、それは偏に私の無愛想さ故だろう。まあ、そもそもお忙しそうなんで、私の髪型の変化などどうでもいいっすね。それはさておき、最初にポイントカードの有無を訊かれ、いや初めてです。お作りしますか? お願いします、てぇな具合でポイントカードを貰い、実は小規模ながらもチェーン店である、という事を知った。系列店が我が家からそう遠くない所にあるという事も(徒歩10分程度はかかるが)。一回利用につき、平日雨の日ならポイント2倍。10ポイント貯めると、次回カット時500円引き。なかなかにお得なサービスではないか。貧乏人はな、ポイントに目がねぇんだよ。以来、大変お世話になっております。

 本当は、来年1月に頭を丸めるつもりだった。ある種の願掛けとして(願掛けならば、寧ろ髪は伸ばし続けるべきでは、というつっこみはさておき)。そう周囲にも宣言していた。それを結果的に、このような中途半端な形で裏切る事になってしまい、申し訳ない気持ちで一杯だ。許せ。諸君の健闘を草葉の陰から(?)祈っている。担当して下さったのは比較的若めなお姉さん。初顔合わせだ。新人さんだろうか。今日はどうしますかー? と訊かれ、坊主で、側面1㎜、上4㎜で、と007の様に(?)告げる。鏡に映る年一恒例の儀式、見慣れた光景。髪の毛がハラハラ、いやボトボトと落ちていく。よく坊主にはされるんですかー? ええ、年に一回は必ず、おざなりな遣り取りをしながらも、みるみる刈り上げられていく我が頭。たかが坊主と言う勿れ。そこはやはりプロの仕事。バランス等を考えてだろう、細かく調整を加えながら、所要時間15分程で完成。申し分なし。今日も綺麗な形だ。お礼を言って店を出ると、早速帰宅用に持参していたキャップを被る。流石に仕立ては少し気恥ずかしいし、頭も大分スースーするので。そのまま、散歩(+運動)がてら少しだけ廻り道をして帰宅するも、たったそれだけの事でどっと疲れる。即楽な格好に着替え、ソファベッドに横たわる。多分、少しうとうとしたのだろう。気づけば、大分陽が傾き、黄ばみがかった日差しがリビングに差し込んでいた。長女の姿はないので、どうやら一旦家に戻った後、遊びに出たようだ。待つ事暫し、妻が次女を連れて帰宅。去年であれば、次女はいきなり坊主になった自分を怖がり、ママの後ろに隠れ、なかなか近づいて来ようとしなかったものだが、流石にもう慣れたようだ。妻が寝転がる私の頭をスリスリして、気持ち良いねえ、犬みたい。よっちゃん(次女の仮名)も触ってご覧、と言う。そう、自慢では無いが、私の坊主頭は手触りが良い。脂ぎってもおらず清潔感たっぷり。何より触った人はほぼ100%の確率で、犬の毛みたい、そう言う。次女も私の頭を撫で、うん、きもちいい、と、にっこりして言う。嗚呼、俺の頭を撫でたら御利益あるという、お地蔵さんみたいな触れ込みで宗教法人作り、一稼ぎ出来ないだろうか。実際には、"無気力"な"あばれる君"なる、矛盾を孕んだ存在ですけど。そんなこんなではあるが、かといってきちんと眠れるかどうかはまた別の話。特に明日は国民の祝日という事もあり、家人はいつもより夜更かし気味。喧しいなあ、と内心思いつつも、ここはじっと我慢。これだけ迷惑、心配、苦労を掛けているしね。明日、祝日だし天気も良いみたいだから、何処かお出掛けしようと思うんだけど、パパも行く? TVを観ながらふと妻が訊いてくる。考えとくわ、元気があったら。そう返事をする。まるで乗り気のしない飲み会に誘われた時の様に。行けたら行くわ。